2020.12.21
2月17日(木曜日)午後7時から戸倉公民館2階の自然活用センター多目的ホールで、公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団の研究室長の嶋田哲郎さんを講師に迎え「南三陸のコクガンの暮らし」の講座が開催された。雪で足元が悪い中、ソーシャルディスタンスを保ち、感染対策も完璧にしたところで約20名ほどの参加者が来場、YouTubeでのライブ配信も行われたが、約100名ほどの参加者があった。コクガンは日本で越冬するのは約3000羽、そのうち南三陸町に飛来するのは200羽〜300羽になる。今回の調査は1月下旬、歌津の泊浜と戸倉の津の宮で4羽を捕獲し、背中に衛星利用測位システム(GPS)の送信機、脚に個体識別の輪を付けて追跡を始めた。途中3羽は消息が途絶えたがデータが蓄積されていたため、1羽は春の渡りでオホーツク海を縦断し、6月に約2500キロ離れたロシアのマガダンに到着したのがわかった。コクガンは春の渡りで4月末に志津川湾を飛び立ち、7月に約4200キロ離れたロシア北極圏のファデエフスキー島に到着。長いこと滞在し移動も少ないことから、換羽もここで行われることがわかった。秋の渡りは9月に同島からチャウン湾などを中継し、現在は北海道の襟裳岬周辺にいることが確認されている。GPSは携帯の電波を使っているが、位置情報を4時間置きに把握できるものの、繁殖地とされるロシア北極圏は圏外になるため、マガダン到着後は受信できない状況が続いたが、11月23日に受信を再開できた。この時、コクガンは圏内にある襟裳岬周辺に飛来していた。「襟裳岬でコクガンが確認された時はとにかく感動した。北海道に住んでいる先輩の谷岡さんにとても恐縮したが、頼み込んで写真を撮ってもらった。快く受けてくださり、野付湾のコクガンと、泊浜のコクガンが確認できとても嬉しかった」と嶋田さん。オス同士だからつがいになることはないが..同じような境遇を楽しんでるのかもしれない。
震災後、地盤沈下したことでスロープにも藻が付きやすくなって食物が増えるなど、諸々の要因でコクガンが増えてきたなど調査で志津川湾での暮らしもわかってきた。コクガンは行動範囲がとても狭く、昼間は湾のスロープ近く、夜は少し沖で眠るなど。採食行動は、ついばみ、倒立、労働寄生(コクガンが潜ってアマモを採ってきたものを横取りすること)と言うことなどがわかるようになった。宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団(宮城県栗原市)と南三陸ネイチャーセンター友の会(宮城県南三陸町)が、志津川湾で越冬するコクガンの経路の追跡に成功したのは国内初。「兎にも角にも、地元の方の理解と研究のたくさんの協力者がいて成り立つものだ、とても感謝している」と何度も感謝を述べていた。
GPSをつけたコクガンが南三陸町に戻ってくることを期待せずにはいられない。(引用:南三陸ネイチャーセンター友の会Facebook)